患者が受ける治療法を医師は最良の治療だと思っていない!?

 
病気になったときの治療法ですが、患者の立場としては、医師自身が病気になったときに選択する治療法を患者である自分に施して欲しいと思うのが、当然だと思うのですが、現実はそうではないようです。

がんの専門医261人に対する、あるアンケートでも、患者にはほとんどの場合、抗がん剤を使用しますが、医師である自分ががんになった場合に抗がん剤を使用すると答えた人は、なんと1人しかいませんでした。

これは、現在の医療制度上、医師を責めることはできないのかもしれませんが、こういった事実があるということは、ぜひ知っておきたいものです。

医師の治療法の選択について、アメリカでの研究結果がございましたので、ご紹介させていただきます。


プライマリケア医(専門医ではなく、身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療を行うドクター)は、自分自身が治療の選択に直面した場合、患者に対するアドバイスとは異なる選択肢を選ぶ方が多いことが、新しい研究で明らかになりました。

今回の研究で、米デューク大学(ノースカロライナ州)のPeter A. Ubel博士は、米国のプライマリケア医に2つの異なる治療決定シナリオの1つを示しました。


1つ目のシナリオでは、医師242人に医師自身または患者が大腸がんと診断され、2つの手術のうち1つを選択できると説明しました。

いずれの選択肢も治癒率は80%であるが、一方は死亡率が高いが副作用は少なく、もう一方は、死亡率は低いが人工肛門形成術の必要性、慢性の下痢、間欠性の腸閉塞または創部感染が生じる可能性が高いというもの。

調査の結果、自身のことになると、37.8%の医師は副作用が少なく死亡率の高い方を選択しましたが、患者に対してこれを選択したのは24.5%のみでした。


2つ目のシナリオは、鳥インフルエンザの架空の新規ウイルスへの感染に関するもの。

インフルエンザ自体による死亡率は10%で、患者の30%が平均1週間入院。

治療を行うと有害事象の割合は半減するものの1%が死亡し、4%に永続的な麻痺が生じます。

調査を受けた700人近い医師の62.9%が治療よりもインフルエンザに耐えることを選択しましたが、患者に治療しないよう勧めた医師は約半数(48.5%)に過ぎませんでした。

Ubel氏は「医師も患者もアドバイスは、思うほど中立的でないことを認識しておく必要がある。よりよい方法は、医師と患者の双方が患者にとって重要なことについて議論を重ねることである。また、自身の金銭的利害や専門性、治療法などに対する医師側のバイアス(偏見)があるために、悪いアドバイスを与えることが多いという懸念もある」と述べています。


( 引用:HealthDay News )