寒い季節になりましたが、皆様お元気でお過ごしでしょうか。
実は、体の中には、冬になると働き始める“暖房装置”があるのをご存知でしょうか。
熱を作るために脂肪を燃やすので、ダイエットにも貢献します。とてもありがたい存在です。
ただ、働きぶりは人によって差が大きいようです。
どんなふうに働いているのか、見てみましょう。
寒さを感じると熱を作る、この季節の強い味方は、「褐色脂肪細胞」というものです。
え、脂肪細胞が味方なの? と思ったかもしれません。
だって体脂肪は普通、少ない方がうれしいものですからね。
しかし、褐色脂肪細胞は、体脂肪をため込む通常の脂肪細胞(こちらは白色脂肪細胞と呼ばれる)とは全く別物です。
むしろ、熱を作るために脂肪を燃やしてくれます。ダイエットにも役立つ存在なのです。
◆寒さの中では熱を作るのが優先される
私たちの体は約60兆個の細胞でできています。
細胞が生きていくにはエネルギーが必要で、そのために私たちは食事を食べているのですが、細胞は、食べ物の成分(糖分や脂肪など)を直接エネルギー源として利用するわけではありません。
食べ物の分子をいったんバラバラに分解し、ATP(アデノシン3リン酸)という別の分子に再構築しています。
この形になってはじめて、エネルギー源として利用できるのです。
◆寒さを感じると、褐色脂肪細胞が脂肪を燃やして熱を作る
ATP生産を担うのが「ミトコンドリア」です。
これは細胞の中にある極小の袋で、平均的な細胞には数百~数千個ものミトコンドリアがあるという。
貴重なエネルギーを利用可能な形に変換するミトコンドリアは、細胞が生きていくうえで最も重要なものです。
ところが、褐色脂肪細胞のミトコンドリアは、もう一つ別の仕事を兼務しています。
それが「熱を作る」ことです。
体が寒さを感じると、褐色脂肪細胞のミトコンドリアは、普段ならATPの原料に使う食べ物由来の成分(主に脂肪)を惜しげもなく燃やして、熱を発生させるのです。
寒いときは、ATPを作るより、体を温める方が大事だからです。
このスイッチを切り替えるのが交感神経。
交感神経が寒さに反応して褐色脂肪細胞に働きかけると、UCPというミトコンドリア内部のたんぱく分子が稼働して、ミトコンドリアを“ヒーター仕様”へ変化させます。
実験的に遺伝子を操作して、UCP分子を持たないマウスを作ると、体温を維持できずに死んでしまいます。
◆褐色脂肪細胞は年を取ると減っていく
実はごく最近まで、人体における褐色脂肪細胞の存在は、きちんと確認されていなかったといいます。
赤ちゃんのときはあるけれど、大人になったら消えると考えられていました。
しかし、大人でも肩や鎖骨の下あたりに存在していることが発見されました。
ただ、活動の程度は個人差が大きく、全く検出されない人もいるようです。
基本的には加齢と共に減るようです。
20代ぐらいなら大半の人が持っていますが、40代より上では見つかる方が少ないそうです。
そして褐色脂肪細胞を持っている人は、実際に体脂肪が少ない傾向があります。やはりこの細胞が活動すると、太りにくいのです。
となれば、どうすればこの細胞の活動を保てるか知りたくなりますよね。
そのためには、冬は適度に体を寒さにさらして、褐色脂肪細胞をきちんと働かせるのがいいと言われています。
暖房の効いた室内にこもってしまう現代人の生活では、褐色脂肪細胞は減少を加速させてしまうのです。